ちとせの先生たちわたしたちの想い
食育を通じて、食の大切さや
ありがたみを感じてもらいたい
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樺山 貴美江 先生
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井上 絵理 先生
<考えさせるを、考える。>を方針に掲げる、ちとせの保育。
日々の「食」においては、どのような点を大切にしながら、子どもと向き合っているのでしょうか。
「食」という観点において、日々どのようなことを意識しながら子どもたちと接していますか。
樺山先生
何よりもまず大切なのが、日常の食事における食育があります。年齢の違いはありますが、食事に携わる。可能なら自分で配膳して、「いただきます」「ごちそうさま」と感謝して食べる。自分で食べて自分で片付ける。子どもたちに、食の大切さやありがたみを少しでも感じて理解してもらえるよう意識しています。
井上先生
普段の食育に加えて、食について考えるきっかけも作っています。例えば「おやつ会議」。給食のおやつを子どもたち主導で考えてもらうという取り組みを、園では実施しています。
おやつ会議。面白そうですね。
井上先生
例えば先日、夏祭りごっこをしたのですが、その時のおやつをみんなに考えてもらいました。アイスを出すのは決まっていたのですが、何味のアイスがいいかをみんなに考えてもらうという取り組みです。先生も加わり話を進めるのですが、話の中心はあくまで子ども。みんなすごく興味を持ってくれて、休み時間にもどの味のアイスがいいかを話していたようでした。
会議はうまく進みますか。
樺山先生
ゼロから話すのは難しいので、先生がいくつか選択肢を出して、みんなの意見を聞くところから始まります。決まった案に対して不服そうな子もいるんですけど、それに対しては別の子が「こうだからこれがいい」と説得してくれたりもする。最終的にはみんなが納得して終わるケースが多く、会議を取り入れてよかったなと思います。
普段の給食において、何か気をつけている点はありますか。
井上先生
例えば、野菜が苦手な子も多いんですけど、野菜を食べやすくするために、みんなが好きな料理に入れるとかはよくしています。カレーに夏野菜を入れたり。どうしても苦手なものについては事前に量を減らし、残すのではなく、少しでもいいから全部食べてもらうなどもしています。これは「残さず食べられた」という自信と経験をつけることが目的です。
樺山先生
家では嫌って食べないものを、園だと食べるということもあるんです。格好つけてみたかったり、友達が食べてるのを見て自分も食べようと思ったり。それって子ども同士が集まったからこそ生まれる不思議な力だと思うんですけど、その力をどうやって引き出すかが、保育や食育に携わる人の力量だと思うんです。給食の献立の工夫は、その力を引き出す取り組みのひとつとも言えますね。
給食の先生は、子どもと接する機会はありますか。
井上先生
もちろんありますよ。クラスに遊びにいって、食材について「こういうのがあるんだけど、どう思う」っていうのを噛み砕いて聞いて、返ってきた言葉で「これはこう調理しよう」とか考える。4、5歳くらいの子どもだと、そういった難しい話でもコミュニケーションがとれるんです。ちゃんと話を理解していて、こちらが予想もしていないような言葉を返してくれることもあります。
樺山先生
井上先生は、すっかり子どもの輪に溶け込んでますよね。クラスにいくと、子どもたちがワーっと寄ってくる。
井上先生
子どもたちに話を聞き始めたきっかけは、私がおいしいと感じているものを子どもがおいしいって感じてくれなかったり、子ども向けと思って提供したものでも食べてくれなかったりしたことがあって。どうしてだろうとずっと考えたんですけど、わからないなら直接聞いてみようと。せっかく園の栄養士になったんだから、もっと子どもと関わって良い給食を作っていきたいと思い、取り組んでいます。
給食とは別に、「子ども食堂」という活動をしていると伺いました。
井上先生
はい。感染症の問題もあり開けない場合もあるのですが、地域の方々、保護者、子どもと一緒に、夕飯を作って食べるイベントを催しています。地域交流も、園で大切にする活動のひとつ。大人から子どもまで、一緒になってご飯を作っています。
樺山先生
そういう場にきょうだいで参加する子も多いんですが、やんちゃな子が弟の面倒を見ていたりと、園では見られない意外な一面が垣間見えることもあります。そこで先生が「すごいね」と褒めると、親の前で誇らしい気持ちになるのか、すごく嬉しそうな顔をする。子どもたちが楽しそうに取り組んでくれていて嬉しいですし、私たち自身も気づきがあります。
井上先生
子ども食堂ではおにぎりとか手巻き寿司とか簡単な料理が多いんですが、子どもが自分の手でやると、思ったより作るのが大変みたいで。ある時は「先生、こんな大変な思いして作ってくれているんだね」と声をかけてくれることもありました。それだけでとても嬉しいのですが、「そうだよ。だからちょっとでもたくさん食べて」と言ったら、「うん、食べる!」と。それで嫌いなものも食べられるようになった、なんてこともあります。
実際に手を動かして作ることは、たくさんの学びが生まれるのですね。
井上先生
子どもにとってもそうですし、保育者にとっても学びがあります。「こうしたら子どもたちはいっぱい食べてくれるんだな」とか、「こうしたら自分で考えて動いてくれるんだな」とか。何かを変えると、目に見えてその変化がわかるので、とても嬉しいですね。