アメリカ・ミズーリ州幼児教育施設訪問
~子どもたちが主体、遊びの中に「狙い」がある保育~
(後編)
小学校へと繋げる、3~5歳児の学習
4・5歳児のキンダーガーデンのクラスでは、小学校に向けた学びの土台作りがすでに始まっており、読み書きや教科別の授業が20〜30分ありました。全体的な説明の後、園児たちは自分の席に座ってワークシートやノート、iPadでの学習に取り組みます。個人の作業時間には心地よい BGMが流れており、リラックスした雰囲気です。とても和やかで楽しい雰囲気の中で学習が進んでいました。
また、日本の保育園では個人のお道具箱がありますが、絵を描くことや粘土遊びのための工作用の道具が中心です。一方、見学した園では自分のノートや筆記用具が椅子の後ろにセットしてあり、学習のための道具を個人で管理する仕組みがありました。そこも日本の保育園との違いを感じました。
キンダーガーデンに進む前の3・4歳のナーサリーも見学しました。「3歳のクラスで今週の文字や算数の活動など、狙いを持ったカリキュラムをするんだ!」とびっくりしました。
例えば遊びの中で、「この子はどのくらい数について知識があるか」といったことを、先生がチェックシートに記載していました。そして個人の発達レベルに合わせた活動を一緒に考えて行う仕組みが整っていました。
キンダーガーデンから学習が始まるので、その前段階の3・4歳でしっかり学習の土台作りを行っているのです。遊びの中で文字や数字などの認知発達を促すカリキュラムが、日本よりもかなり意図的に取り入れられていたように思います。
発達支援が必要な子どもへの、個別的ケア
発達支援の必要な子どもに対してのケアが、園内で個別的に行われていることも特徴的です。見学した学校では、クラスの中に療育専門の先生やカウンセラーがいました。そして保育の時間内に別室に行き、一対一で先生と活動して戻ってくるというスタイルが定着していました。通常の保育や生活の延長上に療育があるのは、理想的だと感じました。
日本では保育園と療育施設が分かれていることがほとんどです。そして保護者の方が有休を使って平日、あるいは土曜などの休日に療育施設に連れていくことが一般的。これは保護者の方の負担が大きく、子どもにとっても、いつもと環境が違う場で療育を受けるのは負担なのではないでしょうか。
療育の必要なお子さんが増えている現状を踏まえ、子どもや保護者の負担を減らし、みんなが幸せに、インクルーシブに生活できるよう私たちも方策を考えていかなければならないと感じた事例でした。
遊びや生活の中で「考える力」をつける保育を
今回視察してみて、「この遊びを通して、何の力がつくのか」という狙いを常に持った保育をする必要性を強く感じました。小学校に入って、授業や生活に馴染めなくて自信をなくしてしまわないように、保育園のうちから小学校の学びの土台作りをさせてあげたいですね。「学ぶって楽しいな」と子どもたちに感じてもらえるように、遊びや普段の生活の中で、考える力をつけるプログラムを私たちが実践していかなければなりません。
具体的には、ビッグブック、カードゲームやボートゲーム、外での集団遊びもそうですし、お手紙ごっこや絵日記など物語を作るという活動にも、さらに力をいれていきたいです。先生が工夫して行うことで子どもが変わり、その様子を見て先生もより保育を楽しめるようになるのではと思います。
今回見学した施設は見習うべきところがたくさんありました。ただ、私たちの「ピアジェの構成論を軸にした保育」「自律性を育む保育」は、海外に比べても決して遅れを取っていないとも感じましたね。自信を持ってこれからも進めていきたいです。
また、今年から海外研修を再開します。2024年度は春にオランダ・アムステルダムの保育施設と小学校への訪問、そして秋にアメリカ・ミズーリ州の今回伺った施設にも訪問するプランを立てています。子どもたちだけではなく、先生たちにも学びの機会が必要です。時代が変わる中、これからの時代の子どもたちに必要なプログラムを取り入れていけるよう、今までの保育観をブラッシュアップしていくための取り組みを充実させていきたいです。